それは八戒と庭掃除をしようと外に出た時に出会った・・・小さな生き物。
コンクリートの部分に外壁に同化してしまいそうな外見、薄茶色で長い尻尾を持った四つ足の生き物。
「!!」
突然現れたそれに驚いて一瞬息を飲んだけど、相手が動かないからじりじりと近寄ってじっと眺めてみた。
突然現れたり、いきなり目の前を横切られたりすると逃げるあたしだけど、動かない生き物に対しては逃げずにいられる・・・みたい。
「動かないでねぇ・・・」
人間の言葉なんか分からない相手にそんな事呟いても意味がないのに、取り敢えず言ってみる。
そしてその生き物と目が合った瞬間、あたしはその真っ黒な瞳に心奪われた。
ちいさな出会い
(別名:イモリ、ヤモリ、トカゲ、カナヘビの違い 講師:猪八戒)
「・・・?」
後ろから八戒に声をかけられたけれど、振り向かず無言で手招きして八戒を呼ぶ。
「どうしたんです?こんな所で壁を見つめて・・・」
「ねぇ、八戒。これってトカゲ?イモリ?ヤモリ?」
ようやく視線を八戒に合わせて、ピクリとも動かない生き物を指差す。
「珍しいものを見つけましたね。これは・・・カナヘビですよ。」
・・・なんだって?
「・・・カナヘビ?」
「はい。」
一瞬目を点にしてカナヘビと呼ばれた生き物を見る。
小さな頃からあまり昆虫や爬虫類と出会う経験がなかったからよく分からないけど・・・カナヘビ?
首をかしげながらカナヘビを指差し、八戒に尋ねた。
「トカゲのくせにヘビだってのに驚くべき?それともヘビのくせにトカゲってのに驚くべき?」
真面目に言ったのに八戒は口元を押さえて零れそうになる笑いを堪えていた。
「・・・八戒?」
「い、いえ・・・すみません。らしいなって思ったらつい・・・」
肩、震えてるよ八戒。口元隠してても笑ってるのばれてるって。
あんまり見てるのもどうかと思ったからカナヘビに視線を戻す。
昔田舎で家の壁にはりついてるの見て悲鳴あげたけど、あれは何だったんだろうなぁ。
あたしこの手の形の生き物は全部「トカゲかヤモリかイモリが出た」ですませてたから違いが分かんないんだよね。
ようやく落ち着いた様子の八戒に、まるで理科の先生に質問する小学生のように手を上げて質問してみる。
「ねぇ八戒、トカゲとヤモリとイモリの違いって何?」
「僕もあまり詳しくはありませんが・・・ヤモリはヤモリ科の爬虫類で足の指が五本。主に家屋に生息して夜活動する生き物で、イモリはイモリ科の両生類で、池・沼・小川に生息している生き物・・・と言う事くらいでしょうか。」
「へぇ〜・・・」
あまり知らない、と言っておきながらこれだけ知ってればあたしの中では物知り博士だ。
引き続き、あまりよく知らないと言う物知り博士の声に興味深々で耳を傾ける。
「トカゲとヤモリの違いは・・・瞼があるかないか、と言うのが一番判別しやすいですかね。」
「・・・瞼!?」
あいつらに瞼なんてあったのか!!
目から鱗が今日だけで何枚はがれ落ちたかわかんないや。
「あと、ヤモリは家を守る事から『守宮』、イモリは井戸や水田を守る事から『井守』と漢字で書く・・・と言う事くらいでしょうか。」
「それだけ知ってれば充分だよ、八戒。」
おかげで少し頭がよくなった気がする。
そっか、じゃぁ小さい頃田舎の家で見たあいつはヤモリだったのか・・・って今更分かったってしょうがないじゃん!!
そこまで考えてふと我に返る。
「で、なんでこれがカナヘビ?トカゲかヤモリじゃないの?」
「今日のは勤勉ですね。」
「・・・だってこの子可愛いもん。」
「普段こういうのが出たら一番に逃げちゃう人が珍しいですね。」
――― ごもっとも。
だって目の前に急にこんなの現れたらビックリするじゃん!しかも目の前に!!
でもこの子は動かないし、飛び掛らないし、急に動かないし・・・何よりこの真っ黒でつぶらなクリッとした目!
背中の柄も気持ち悪くないし・・・小さいし・・・。
動かないカナヘビをウキウキと眺めていたらポンッと頭に手を置かれて、何かと思って振り返る。
「講義、続けましょうか?」
「お願いします!!」
音がしそうなくらい首を上下に振って、八戒の心地良い声で教えられる雑学を引き続き頭に刻み込む。
「カナヘビはトカゲなんですよ。」
「ヘビのくせにトカゲ!?」
はい、目から鱗一枚落ちました〜。
「ヘビとトカゲの一番の違いは目が閉じられるか、閉じられないかと言う事なんです。」
「・・・目を、閉じる!?」
「はい。」
・・・目から鱗、また落ちました。
「だからほら、今はこの子瞬きしませんけど暫く見てるとすると思いますよ?」
「何で?」
「トカゲですから。」
にっこり笑顔でそう言われて、頭の中が混乱している事に気がついた。
まったく、生き物に名前をつけるならトカゲならトカゲらしく『カナトカゲ』とかにしといてくれればいいのに、へたに『カナヘビ』なんていうから覚えられないじゃないか。
自分の記憶力の悪さは棚の上に載せて文句言い放題だ。
昔歴史上の人物の名前を足利1、足利2にしろといった自分が脳裏をよぎる。
ひょっとしてあたし、脳みそ成長してない?
けれど目の前のカナヘビはそんなあたしの心境など全く知らん顔で、相変わらずピクリとも動かない。
お前、本当に生きてるんだろうな・・・とさすがに心配になってくる。
「カナヘビとトカゲは一見区別がつきにくいですが、カナヘビは尻尾が長くて体長の三分の二が尻尾なんです。」
「長っっ!」
「ね、このカナヘビも尻尾長いでしょう?」
言われてカナヘビを見ると・・・確かに体の二倍はあるわ、尻尾。
「トカゲの尻尾はもっと短いんですよ。」
「へぇ・・・八戒物知りだね。」
「たまたま読んでいた本に載っていたのを覚えていただけですよ。」
「八戒濫読だもんね。」
「家事の合間に手近にある本を手当たり次第読んじゃいますからね。」
「でもおかげで色々分かったよ。ありがとう!!」
ペコリと頭を下げて顔をあげた瞬間、壁際に張り付いていたカナヘビが目の前にいて思わず悲鳴をあげてしりもちをついた。
「うわぁぁぁぁぁっっ!!!」
「おや?可愛いって言ってませんでした?」
「そっそっそれは遠くで見てる時だけっっ!」
「近くで見ても可愛いですよ?」
八戒の手の中でさっきまで遠くに見えていたカナヘビがくりくりの瞳でこっちを見ている。
可愛いけど、可愛いけど・・・
「触ります?」
「遠慮します!!!」
「残念でしたね、カナヘビさん。」
今にも泣き出しそうなあたしを見て、八戒は手に持っていたカナヘビをそっと草の上に置いてやるとさっきまで全然動かなかったのが嘘のような勢いでカナヘビは愛想もなく森の方へ姿を消して行った。
「・・・はぁ〜」
「折角がひとつ大人になるチャンスだったんですけどね。」
「・・・どうせ臆病だもん。」
子供のように頬を膨らませてそっぽを向けば、八戒が苦笑しながら慰めるようにポンポンと肩を叩いてくれる。
「そんな所もの可愛らしい所ですよ。」
「・・・!?」
突然の八戒の言葉に驚いて心臓が跳ね上がる。
さり気なく太陽を背中にしょって、そんな眩しい笑顔でそんな事言われたら・・・顔、赤くなっちゃうよ!
慌てて両手で顔を覆って隠したんだけど、八戒に気付かれないはずはない。
チラリと顔をあげて八戒を見れば、やっぱり嬉しそうに笑ってる。
・・・あぁもう、八戒の言葉以上に驚く事なんてないかも。
だけど、心臓に悪い八戒の言葉以上にあたしの心臓を跳ね上がらせたのは・・・この後、二人で庭の草むしりをしていた時に地面の中から出てきたのは大嫌いな昆虫だった。
思わず隣にいた八戒にしがみついたのは・・・言うまでもない。
私の記憶力が微かに残ってれば、W記念に何やって欲しい?って言うアンケートでキャラが講師で何か教えるってのがあったと思ったのでやってみた。
ちなみにこの話はほぼノンフィクションです!
カナヘビに出会って暫し見詰め合っていたのも、トカゲ?イモリ?ヤモリ?と聞いたのも、トカゲに驚くべきかヘビに驚くべきか・・・と迷ったのも、足利1,2と名付けたのも・・・全部事実(笑)他にも藤原1,2とか色々言ってましたケド(同苗字がいっぱい出るたびに言ってた(笑))
で、折角だから調べてみようとネットを駆使して彼らの違いを調べてみました(えっへん←えばるな)
遠くから彼らを撮った写真が出てる分には平気なんですが、アップの写真が出ると思いっきり体が仰け反りました(苦笑)苦手なんですよぉ(TT)
で、調べたからには形にして残そう、と言う事で猪八戒先生においで頂きましたw
皆さん、ちゃんと彼らの違いがわかりましたか?豆知識程度には、なると思います。
道端、涼しい影などでカナヘビに出会ったら「あぁ風見が惚れたのはこいつか」と思ってください。
目が可愛いんですよぉ〜w真っ黒でクリクリの目w勿論、素早く動かない場合、に限りますが!!!
※ 一応ちゃんと調べたから間違いないと思いますが、疑問を持ったらもう一度自分でも調べてみて下さいね?
で、もしも風見が間違えてたら直すので、こっそり教えてくださいm(_ _)m

↑ちなみにコレが風見の携帯で激写したカナヘビくん↑